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自分でプログラミング可能なエフェクターは高価なものが多く(2~3万円)、デジタルエフェクターを始める上でのハードルの一つとなっていると思います。そこで、低価格なデジタルエフェクター入門機の販売に向けて製作したのがこのペダルです。
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金属ケースの加工は自分で行うには大変すぎるし、外注すると高額になってしまうので、Elecrowのアクリル加工サービスを利用した筐体となっています。本体は下写真のように基板とアクリル板計7枚から構成されています。アクリルのデータもKiCadで作成しました。(図面データはGitHubへ)


メイン基板は表面実装部品のみElecrowのPCBA(部品実装)サービスを利用しました。詳細は別記事にまとめる予定です。
▽回路図(KiCadデータはGitHubへ)

最低限の機能ということで、ステレオ不可、入出力は単純な1次ローパスフィルタとなっています。レギュレータはそれなりの発熱が予想されたため、抵抗器を入れるといった対策を行っていますが、実測では消費電流150mA程度だったのであまり要らない心配だったかもしれません。
操作系は以前製作したSrempyと同じで、ディスプレイとスイッチ5つという構成です。ポットだとどうしてもフットスイッチとの干渉が気になりますし、ディスプレイを付けたかったのでこの形になりました。
オペアンプはOwm PedalではOPA1678でしたが、入力がRail to Railでないことに気づいていませんでした。やはり許容入力が大きい方がよいので、TLV9062(5V駆動可、入出力Rail to Rail)を使っています。未検証ですがGS8632もよいかもしれません。(TL072等を9V駆動で使い、オーディオコーデックの入出力にカップリングコンデンサを入れる方式が標準的だと思います。少しスペース的に厳しくなりますが…)
オーディオコーデックICはPCM3060を採用しました。CS4270、ES8388を使ったプロトタイプとのノイズ比較データは下図の通りです。GNDにスリットを入れてみましたが、効果の程はわかりません。概ねICのスペック通りの結果なのかなと思います。

コーデックICの検討を進めている時、旭化成の工場火災の影響かコーデックIC全体が品薄となりました。CS4270を使いたかったのですが、入手が難しく採用をあきらめました。PCM3060はリードタイムが比較的短く、ある程度供給は大丈夫だろうと思います。ES8388もコストパフォーマンスがよいので別の機会に使ってみたいところです。
マイコンはSTM32F722で、処理能力やメモリ容量を考えるとそれなりの価格になってしまいますが、ここは妥協できないところです。SAIペリフェラルを使いこなすのはあまり自信がなかったので、いつも通りI2Sを2つ使う方式で通信しています。
見た目はあまり気にしていないのですが、アクリルを使っているおかげで暗いところでは目立ちそうです。赤LEDにPWM出力が設定できないピンを選んでしまったので、ここは変更するかもしれません。

そもそもデジタルエフェクターのプログラミングをやってみたいという人はそんなに多くはないと思います。それでもデジタルエフェクター普及を進めたいので、ほとんど利益はない価格設定です。私自身プログラミングは初心者に毛が生えたようなものなので、うまくいかない部分も出てくるかもしれませんが、できるだけ継続販売していきたいと思います。
ProCo RAT(LM358・スライドボリューム仕様)

Twitterでの1000フォロワー達成プレゼント企画として、スライドボリュームを使ったRATを製作しました。基板を組み合わせたケースを採用することにより、通常は困難なスライドボリュームの穴加工をうまく実現することができました。
本体部分の高さはフォンジャックやスライドボリュームに合わせており、2cm程度しかありません。フットスイッチはどうするか悩みましたが、何とかはみ出した状態で取り付けています。踏み込む力が底板側に加わるように工夫しました。
今までは基板やアクリル板を何枚も重ねた筐体でしたが、今回は側面が基板なので多少はノイズに強くなっていると思います。ただし強度がないので、変なところを強く踏むと壊れてしまう可能性が高いです。
▽回路図(KiCadデータはGitHubへ)

LM308は現在製造されていないため、スルーレートやGB積が似ているLM358を使うことにしました。オフセット電圧や入力バイアス電流等の違いはありますが、音にはそれほど影響しないと思います。
元のRATのFETバッファ部分はオペアンプで置き換え、2倍増幅しています。Timmy Overdriveで採用されている方式ですが、シリコンダイオード1個分でのクリッピングの場合の音量不足に備えた措置だと思われます。何だかRATと呼んでよいのかわからない感が出てきますが気にしないことにします。
出音は概ねRATっぽくなっていると思います(本物のRATが手元にないため厳密に似ているかはわかりません)。スライドボリュームの操作は、慣れていないためかそれなりに違和感があります。ほこりが入りやすい、メンテナンス性が悪い等いろいろ問題はあるのですが、とにかく見た目のインパクトが最高なのでよしとしましょう。
▽製作過程



皿ネジを使う部分の皿もみ加工では有鉛はんだの削りカスが飛散するため、銅箔なしの穴にするべきところでした(KiCadデータは修正済)。


ジャック類はシルク印刷に合わせて取り付けて特に問題なかったです。フットスイッチ取付用スペーサーの長さは22mm程度となっています。

最後に側面をはんだ付けで留めて完成です。
Fuzz Face 積層アクリル筐体


以前基板筐体のDS-1を製作しましたが、今度は丸い筐体のエフェクターも作ってみたくなりました。そうなると思いつくのはやはりFuzz Faceです。
下写真のように基板とアクリル板計8枚から構成されています。※アクリル加工の注文等に関しては別記事へ


電池も入れられるようにしたので、あまり内部に余裕がありません。タクトスイッチ基板は表側の基板から吊り下げるようになっています。設計ミスでDCジャックの横に少し隙間があいてしまいました。
▽回路図(KiCadデータはGitHubへ)

ファズは入力インピーダンスが低いものが多く、バッファードバイパスにすると音が変わるため、トゥルーバイパスにするしかありません。ノイズを最小限にするため、リレーを最短距離で配線しています。回路はTrue Bypass Relay Moduleの時とほぼ同じですが、9Vのリレーを使用し、チャタリングが少ないスイッチ用に一部抵抗値を変更しています。
トランジスタは、一般的な2SC1815のチップ版ということで、なんとなく2SC2712を選びました。バイアス調整としてはコレクタに繋がる抵抗(R2、R5)をトリマーにすることがあるようですが、Fuzzface概論というページを参考にR2を可変にすることにしました。そこで登場するのが、紙を鉛筆で黒く塗りつぶした抵抗器です。R2に並列に取付できるようになっています。少し取付部の距離が長すぎましたが、頑張って塗りつぶせば10kΩ程度まで値を下げられると思います。

実際に抵抗値を調整してもあまり音に変化がない感じだったので、どこかにミスがあるかもしれません。やはりファズは難しいですね。最終的にR2は100kΩ、紙の抵抗器も100kΩ程度にしています。
紙と鉛筆の抵抗器は、昔コンデンサの自作をした際にアイデアだけがありました。数年の時を経て実現できてよかったです。経年変化がどうなのかはわかりませんが、他のエフェクターで使ってみるのもよいかもしれません。
Ibanez TS9 TUBE SCREAMER アクリル製ケース & 木製ケース

Elecrowのレーザーカットサービスでは、アクリルや木材等の高精度な加工を依頼できます。このサービスを利用してエフェクターの筐体を設計すると面白そうだと思いやってみました。単純な箱型ではなくフットスイッチ部分を傾けた形にすることにして、中身は安直にチューブスクリーマーを選びました。
※加工の注文等に関しては別記事へ
▽回路図(KiCadデータはGitHubへ)

以前製作したDS-1と同様に、クワッドオペアンプとロジックIC仕様です。TS9でもTS808でもない感がありますが気にしないことにします。
今回Daier ElectronというメーカーのSPSTフットスイッチを使ったのですが、約4msに渡ってチャタリングが起こることがあるようです(下写真の黄色参照)。誤動作防止のため、DS-1の時より大きめの値のチャタリング防止回路へ変更しています。

▽内部写真

コンデンサは手持ち分を消費したかったのでスルーホールタイプです。トーンポットはGarrettaudioにあるGカ-ブ類似品の20kWを使いました。フォンジャックはDaier Electron製です(組み立てやすいようにねじ部をカッターで少し削っています)。
▽ケースについて
フットスイッチ部分は8度の傾斜で、内部寸法はHAMMOND1590Bとほぼ同じとしました。アクリルだけでもよかったのですが、木材も同じ図面データを使い回せるのでついでに注文しました。一応2台の音を聞き比べてみましたが、特に違いは感じられませんでした。
木製ケースは単純にボンドで接着するだけなのですが、アクリル製ケースは汚れ等が目立つので組み立てに気を使います。最初の設計では嚙み合わせ部分の隙間がやや大きかったので、隙間を詰めてねじ穴パーツ取り付け位置を変えたバージョンも作りました(左下写真、図面データはGitHubへ)。


組み立て時には右上写真のように「のりしろ」部分のみ保護シールをはがしました(棒状パーツの両端をはがし忘れています…)。アクリル樹脂専用接着剤ABN-1というものを使いましたが、付属のスポイトは量の調節が難しいです。案の定アクリル保護シールに接着剤が大量に染み込み、表面がザラザラになってしまいました。どうやら必ず注射器を使う必要があるようです。
BOSS OD-1 Over Drive (Light)

BOSS OD-1を簡略化したエフェクターです。なかなかケースを準備できず長い間基板だけ放置状態でしたが、ようやく完成させました。
▽回路図(KiCadデータはGitHubへ)

OD-1からの主な変更点は以下の通りです。
・入出力のバッファ→省略し、トゥルーバイパスリレーモジュールを使用
・出力反転→非反転
・途中のローパスフィルタ 10kΩと18nF→18kΩと10nF
・電源電圧→3.3V(レギュレータ使用)
・バイアス電圧→1.8V(レギュレータ使用)
・LEVELポット10kB→100kA、位置変更
後から気づきましたが、入力のハイパスフィルタが元の回路では10kΩと0.047uFなので、それに合わせると1MΩと470pFという値の組み合わせになります。その場合は低音域が減るので、LEVELポットはBカーブの方が調整しやすいです。(内部写真はこの改造を施した後のものとなっています。)
▽基板写真

基板はFusionPCB(https://www.fusionpcb.jp/)に注文し、部品実装も頼みました。部品点数が少ないので部品を機械で載せていないかもしれませんが、ズレがなくてきれいです。ポットは私が型番を間違えてしまい自分で無理やり取り付けたため、汚いのが目立ちます…。(注文当時5枚実装無料サービス中でしたが、現在その無料サービスは行われていません。)
レギュレータを使用しているため、たぶん電源についてはローノイズになっているでしょう。ただ音質に関してレギュレータの効果があるのかはイマイチよくわかりません。Zoom MS-50GのOverDriveと出音を比較すると、当たり前ですがよく似ています。TONE50では自作機の方がややブライトに感じられましたが、微妙な違いかなと思います。