WAY HUGE WHE208 OVERRATED SPECIAL 解析


WAY HUGEは有名エフェクタービルダーJeorge Tripps氏のブランドで、何か一つ解析してみたいと思い、OVERRATED SPECIALを中古で入手しました。KiCadとLTspiceのデータはGitHubにあります。



▽回路図
WAY HUGE OVERRATED SPECIAL schematic
基板が2枚あり、回路図の上半分が黒いメイン基板上の回路です。下半分が赤い基板上のリレーバイパスと電源関係の回路ですが、あまり動作を理解できていません。電源供給が断たれた時、バイパス状態になるように設計されているようです。

メインの回路は、大部分がチューブスクリーマーと同じとなっています。主な違いは、500Hzコントロール部追加、バイアス電圧が高め、バイアス電圧部のコンデンサ容量が小さいといった所です。また、トーンのポットがCカーブなので、操作感が違っています。

TONE最大・最小時は同じで50%時に高音域寄りになりますが、思ったよりバランスがよいコントロールに感じます。

500Hzコントロールは、実測・シミュレーションではなぜか900Hz付近の増減となっています(下図)。

周波数に関係するコンデンサはC15とC16、抵抗はR23とR24です。これらが前の所持者により交換されている可能性を考え、他の個体の内部写真を検索しました。コンデンサは同じ値なのを確認できましたが、抵抗については明瞭な画像がなく値がわかりませんでした。再度半田付けしたような痕跡はない(下写真)ので、やはり元々こういう設計なのだろうと思います。

同時期に発売されたGREEN RHINO MKIVに500Hzコントロールがあるので、これを発展させた結果周波数が変わったのかもしれません。後発のSmallsシリーズのWM28では「freq」という表記に変わっているので、こちらも周波数は500Hzではない可能性が高いと思います。


タグ : 市販エフェクター 歪み 回路図 周波数特性 

FZ-1WVL


以前アクリル筐体のFuzz Faceを製作したのですが、ファズに関する知識があまりない頃に作ったものなので、何となく中身を作り直したくなりました。そこで、最近解析したBOSS FZ-1Wを簡略化したものを入れることにしました。「VL」はヴィンテージモード、ライトバージョンという意味合いです。

▽回路図

内部スペースがあまりないため、トゥルーバイパスでヴィンテージモードのみとしました。トーンは省くことも考えましたが、やはり必要だろうと思い、トリマーで調整できるようにしています。電源はできるだけ簡略化せず、誤って18Vを入力しても大丈夫なように配慮しました(参考→BD-2W)。ラッチングリレー周辺はGEOのLatching Relay Bypass Circuitを元にしたものです。以前は9V仕様でしたが、電池の減りで安定動作しなくなる可能性を考え5Vとしました。

メインのトランジスタ2SC5395Fはサトー電気で100個購入していたのですが、運が悪かったのかhFEが340以上のものがありませんでした。仕方なく320~330程度のものを使用しています。

一番問題だったのがポットで、Cカーブ5kΩのネジ部がない小型ポットがなかなか見つかりません。PT01-D120D-A502というものがあったのですが、逆対数という表記なのに実際はAカーブ(対数)となっています(そのうち表記が修正されるかもしれません)。とりあえず、AliExpressにあったメーカー不明のものを購入しました。少しカーブの変化が急な気がするものの、問題なく使えています。

基本的にはFZ-1Wと同じ音で、筐体が円形になったことで何となくファズフェイスに近くなったような気がします。ファズとしては部品点数がなかなか多いですが、トランジスタを選別せずR21をトリマーにするといった対応をすればクローン製作もやりやすいのではないかと思います。

タグ : 自作エフェクター 回路図 歪み 

FF1815G(FFM2風ファズフェイス)


FF108B & FF1815に引き続き、無選別の2SC1815-GRを使ったファズフェイスを製作しました。今回は、ゲルマニウムトランジスタが使われているファズフェイスFFM2(Jim Dunlop GERMANIUM FUZZ FACE MINI)の音に近づけられるのかどうか検証してみます。



▽回路図

FFM2実機を分解するの少し大変なので、こちらのページの内部写真を参考にしました。FF1815と同様、トランジスタは2SC1815-GR(JCET製)です。周波数特性を合わせるため、コレクタ-ベース間のコンデンサ容量が大きめの値となっています。

FF108B & FF1815の記事で記載した通り、hFEを同じにしないと厳密に同じ音にすることはできないと思われます。ゲルマニウムトランジスタはhFEが低いものが多いため、それに合わせるためにトランジスタ2個と抵抗器1個を組み合わせる方法があります(参考ページ→Piggyback Si transistors to simulate Ger ???)。ただ、今回は手軽さを重視してトランジスタは単体で使用し、歪率や倍音構成が近くなるようにトリマーを調整しました。

▽周波数特性(VOLUME 100% FUZZ 100% 気温24℃)

FFM2では入出力のカップリングコンデンサの容量が大きく、低音域があまりカットされません。また、ゲルマニウムトランジスタはコレクタ-ベース間の寄生容量が大きく、高音域が下がっています。

▽波形・倍音
<FFM2>


<FF1815G hFE(Q1)=312 hFE(Q2)=312 Vc1=1.71V Vc2=4.04V>


歪率が低い時、FFM2のクリッピングは丸みを帯びた形です。倍音構成がキレイに斜めに並び、ややこもったように聞こえます。このあたりがゲルマニウムトランジスタらしさの要因ではないかと考えられます。動画でも注意深く聞くとこの特徴がわかるかと思います。



タグ : 自作エフェクター 歪み 回路図 周波数特性 波形・倍音 

Fender Hammertone Overdrive 解析


Fender Hammertoneシリーズのエフェクターは表面実装部品が使われているため、なかなか解析する人がいないようです。しかしながら1種類くらいは回路を見てみたいと思い、Overdriveを中古で入手し解析しました。KiCadとLTspiceの回路図データはGitHubにあります。


ケースの設計や内部の配線がしっかりしていて、低価格とは思えない作りだと感じました。ただノブは金属部が薄く、取り外す場合は注意が必要です。LEDの輝度調整トリマーを付けられる部分が見えますが、利用するには内部のジャンパー抵抗を取り外す必要があります。



▽回路図
Fender Hammertone Overdrive Schematic
ミッドブーストにはジャイレータ(シミュレーテッドインダクタ)が使われています。設計者のこだわりなのか、バイアス電圧が5Vになっていたり、4.5Vが2ヶ所分けてあったりします。バイパス方式はMOSFETを使ったMillenium 2バイパスです。

ダイオードクリッピングは、ソフトクリッピングとハードクリッピングを組み合わせたタイプです。下記ページで2ステージ回路として紹介されています。
シングルステージ vs マルチステージ・ゲイン・トポロジー



▽シミュレーション
  • PRE-MID BOOST

    600Hz付近を11dBブーストできます。

  • GAIN

    チューブスクリーマーとの比較です。増幅率や低音域の調整具合が少し違っています。

  • 内部TONE
    Fender The Trapper Dual Fuzzと同じ、10kΩと33nFのローパスフィルタです。トリマーはCカーブではなくBカーブ(直線変化)なので、微調整はやりにくいかもしれません。基本的には最大にしておき、必要に応じてハイカットするという使い方でよいかと思います。

  • TONE

    チューブスクリーマー(ハイカットのコンデンサなし)との比較です。Hammertone Overdriveの方が高音域寄りの調整となっています。


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FREE THE TONE IRON FOREST IF-1D 解析


FREE THE TONEはプロミュージシャンの機材で目にすることが多いメーカーです。今回は生産終了品のIRON FORESTを中古で入手し解析しました。KiCadとLTspiceの回路図データはGitHubにあります。

09_322_05_ironf_do.jpg
4つのクリッピングダイオードのうち、D3は1S1588のような外観で、おそらく小信号用汎用ダイオードです。D2、D6、D7はあまり見かけないSOD-57というパッケージで、マーキングがないため型番を特定するのはあきらめました。順方向電圧VFを測定すると、1N4148の0.64Vより少し小さい0.60Vと出ました。端子間容量は、LCRメータでを測定すると1nF程度となりうまくいきませんでしたが、周波数特性から推定すると数十pF程度ありそうです。

オペアンプはホットボンドのようなものが付いていましたが、爪で簡単に剥がすことができました。NJM4558Dという一般的なオペアンプが使用されています。同時発売のGIGS BOSONも同様です(参考ページ→FREE THE TONE GIGS BOSON GB-1Vの修理)。特に隠す必要はないように思いますが……



▽回路図
FREE THE TONE IRON FOREST IF-1D Schematic
歪みの回路はシンプルなオペアンプの反転増幅です。LEDインジケーターは電源電圧が約5.5V以下で消灯するようになっています。バイパスはバッファと機械式スイッチを使った方式で、HTSサーキットと命名されています。フリーザトーン代表 林氏のブログに開発秘話が掲載されていますので、併せてご参照ください。
GIGS BOSON & IRON FOREST開発秘話(1)
GIGS BOSON & IRON FOREST開発秘話(2) 設計姿勢とHTSサーキット
GIGS BOSON開発秘話(3)
IRON FOREST開発秘話(4)
  • 入力バッファ
    PETE CORNISHのバッファと同様のの回路です。C14による正帰還をかけることにより、入力インピーダンスを高くすることができます(参考ページ→ブートストラップがあるエミッタ・フォロワの特性)。シミュレーションしてみると、Q1のhFEによって入力インピーダンスが変化するようで、注意が必要かと思います。また、バイアス電圧が7.3Vなので許容入力電圧があまり大きくありません。



▽シミュレーション
  • 増幅部

    低音域のカットが比較的少ないです。IRON FOREST開発秘話(4)にあるように、FUZZっぽいサウンドを出すのに適していると考えられます。

  • BASS TREBLE 各0%→50%→100%

    James EQと呼ばれるパッシブトーン回路の形です。Baxandall(BAX型)トーン回路とは違い、増幅と減衰が対称的になりません。BASS 50% TREBLE 50%では、中音域がカットされる状態になっています。

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