歪みと波形・倍音その9(非線形性と歪み)

歪み系エフェクターのデジタル処理を考える場合、処理内容は基本的に関数の形(入力x、出力y)で書くことになります。以下にその例と非線形関数による歪みについて簡単に説明しておきます。倍音については前回の記事にまとめています。



まず理想的な増幅器を考えます。増幅率をaとすると、出力は入力に比例して大きくなるy=axという式になります。下図はa=1のときの入力と出力の関係をグラフにしたものです。
12_209_1lin.png
このように入力と出力が直線(比例)関係にある場合は「線形」です。直線の傾きaが変わっても線形といえます。正弦波を入力したとき(上図下側)、出力(上図右側)には全く歪みがありません。



増幅器には通常電源電圧等の制約があるため、一定の入力を超えたところから出力が頭打ちします。グラフでは、途中からyが一定となる形になります。
12_209_2hc.png
正弦波を入力したとき、出力はクリップされたものとなります。この場合は線形でないので「非線形」であり、歪みが発生するというわけです。しかしながら、単純なクリッピングのみで自然な歪みを得るのはなかなか難しいと思います。



現実の増幅素子では急に出力が頭打ちになるわけではなく、ある程度滑らかな変化だと考えられます。
12_209_3sc.png
上図の関数はy=tanh(x)で、このようにS字を引き伸ばしたような形はシグモイド曲線と呼ばれています。正弦波を入力したとき、出力はソフトにクリップされたものとなります。



真空管を使った増幅では、非対称で複雑なカーブになるようです。
12_209_4tc.png
正弦波を入力したとき、出力は非対称に変形しているものとなります。この場合の関数の詳細については別記事にまとめています。

タグ : 歪み 波形・倍音 

歪みと波形・倍音その8(各クリッピングと倍音)

Pure Data(Pd)を使って正弦波のクリッピングと倍音確認を行ったので、メモとしてまとめておきます。振幅は適宜調節しています。



<対称ハードクリップ>
12_208_1clips.png
奇数次倍音のみ出ています。

<非対称ハードクリップ>
12_208_2clipas.png
偶数次倍音が加わっています。

<対称ソフトクリップ>
12_208_3clipss.png
ハードクリップより全体的に倍音が減っています。

<非対称ソフトクリップ>
12_208_4clipass.png
こちらも全体的に倍音が減っています。

<半波整流>
12_208_5half.png
偶数次倍音のみ出ています。

<全波整流>
12_208_6full.png
偶数次倍音のみ出ていて、基音がありません。オクターブファズでこの処理を行うことがあります。



クリッピングではありませんが、周波数2倍、振幅0.25倍の正弦波を元の正弦波に足した場合は下図のようになります。
12_208_7oct.png
真空管の歪みは単なる非対称クリップではなく、このような非対称な変形によるものといわれています。

半波整流した正弦波と元の正弦波を混ぜた場合は下図のようになります。
12_208_8halfp.png
非対称に変形した波形になるので、これを利用すれば面白い歪みエフェクターが作れるかもしれません。

---以下2018年3月3日追記---

<対称クロスオーバー歪み>
12_208_9coaa.png
奇数次倍音のみ出ています。

<非対称クロスオーバー歪み>
12_208_9coas.png
偶数次倍音が加わっています。

タグ : 歪み 波形・倍音 

歪みと波形・倍音その7(各波形の倍音)

Pure Data(Pd)を使うと簡単に信号発生と倍音確認ができますので、メモとしてまとめておきます。



<三角波>
12_207_1tri.png
奇数次倍音がきれいに並んでいます。

<ノコギリ波>
12_207_2saw.png
奇数次倍音と偶数次倍音が両方出ています。

<矩形波>
12_207_3sq.png
ほぼ奇数次倍音ですが、三角波より倍音が多いです。

<矩形波+ハイパスフィルター>(※振幅0.8倍)
12_207_4sqHPF.png
波形が斜めにえぐりとられる感じになります。

<矩形波+ローパスフィルター>
12_207_5sqLPF.png
波形が丸く削られる形になります。ローパスフィルターなので高域の倍音が減ります。

<パルス波>(※パルス波という呼称でいいのか不明)
12_207_6sq60.png
矩形波に似ていますが、プラス側とマイナス側になっている時間の幅の比が1:1(デューティ比0.5)ではありません。上図はデューティ比0.6の場合で、偶数次倍音が出ています。真空管の歪みを調べた際にハイゲインでも偶数次倍音が多かったのは、この波形に近いためかもしれないと考えています。

タグ : 歪み 波形・倍音 

歪みと波形・倍音その6(ダイオードの位置)

歪み系エフェクターでは多くの場合、波形クリップのためにダイオードが使われます。ダイオードクリッパーとかクリッピングダイオードという呼び方があるようです。このダイオードの回路上の位置を変更し、波形・倍音の違いを調べました。

歪みと波形・倍音 記事一覧



▽回路図
12_193_1diodeppxc.png
非反転増幅回路の帰還部分にダイオードを入れる場合をODタイプ、出力にダイオードを入れる場合をDSタイプと勝手に呼ぶことにします。偶数次倍音も出るように、非対称クリッピングにしました。入力は1kHzサイン波、約0.14Vrmsです。音量はDSタイプの方が小さくなるため、各タイプ録音後ノーマライズしています。
※Twitterにて指摘をいただき、回路図左上にコンデンサを追加しました。増幅率を変更し、全データを差し替えています。(2017年8月12日)

▽11倍増幅
12_193_2diodepg11x.png
ODタイプの方が倍音が多そうに見えますが、なんともいえない感じです。聴感上は、ODタイプの方が高域が出ているように感じました。

▽21倍増幅
12_193_3diodepg21x.png
2~6次倍音はDSタイプの方が多く、7次倍音以降はODタイプの方が多いです。聴感上も、ODタイプの方が高域が出ているように感じました。

▽34倍増幅
12_193_4diodepg34x.png
DSタイプの方が歪率が高く、全体的に倍音が多いです。聴感上はあまり違いがわかりません。波形については、どの増幅率でもODタイプの方が丸みを帯びた形になっています。

さらに増幅率を上げていくと、ODタイプは歪率が31%程度で頭打ちになったので、深い歪みは得にくいようです。DSタイプは歪率が上がり続けましたが、波形の角が鋭くなるので、ICの歪みが混ざっていると思います。



・総評(のようなもの)

ODタイプは高次倍音が出やすい(クリアな音に感じる)、DSタイプは低次倍音が出やすい(太い音に感じる)というような傾向がわかりました。LED対称クリッピングでも測定しましたが、同じ傾向のようです。丸い波形になるODタイプの方がなんとなく低域寄りな音になるイメージがあったので、意外な結果となりました。

---以下2017年8月20日追記---

▽LTspiceでのシミュレーション結果(21倍増幅)
12_193_5diodepg21xs.png
入力電圧は0.12Vrmsで同じぐらいの歪率になりました。実測と違う部分はあるものの、倍音の出方の傾向は大体同じといってよいと思います。シミュレーションでも歪みの特徴は充分参考になるようです。

タグ : 歪み 波形・倍音 

Nuverdrive+

02_183_1nuverdrive_P.jpg
「Nutubeで作る自作エフェクター・コンテスト」で佳作を受賞したNuverdriveですが、フットスイッチを押したときのマイクロフォニックノイズが大きかったため作り直しました。もともとNuverdriveを小さいサイズにしたのはコンテスト審査でインパクトを与えるためだったので、今回の「プラス」バージョンが本来の姿といえます。

▽回路図
02_183_2nuverdrive_S.gif
変更点は以下の通りです。
<トーン追加>
この形のトーン回路(ただのローパスフィルタ)はCカーブのポットがよさそうです。ただちょうどいい値(2kCカーブ)が手に入りにくそうなので、1kBカーブにしました。可変幅は少ない感じです。
<トリマーを固定抵抗化>
歪みエフェクターなので、細かな調整は必要ないと考えました。Nutubeの個体差によってはほんの少しゲインが下がるかもしれません。
※修正しました(追記参照)。
<オペアンプ>
高音質な印象を与えるためOPA2134を使っていましたが、TL072でも全然問題ありません。
<3.3Vレギュレータ追加>
フィラメントにかかる電圧が安定するため、電池駆動が可能になりました。何Vまで低下しても大丈夫なのかはテストしていません。

▽レイアウト
02_183_3nuverdrive_L.png
▽PCB(横55.9mm縦22.9mm)
02_183_4nuverdrive_LP.gif

マイクロフォニックノイズはまだ少しだけ出ている状態ですが、演奏中切り替えても特に気にならないレベルになりました。以下のような対策をしていますが、HAMMOND 1590Bサイズではこれが限界だろうと思います。
<シリコンワイヤー>
Nutube使用ガイドで柔らかい線材が推奨されていたため、シリコンワイヤーという線材を試しました。茹でたスパゲッティのような感触です。
<適度なスポンジ>
ぎゅうぎゅうにスポンジを詰めると振動がNutubeに伝わりやすくなる気がするため、ほんのり位置を固定する程度に詰めています。
<フジソクのスイッチ>
見た目は頼りない感じで、本来は足踏み用ではなさそうです。スイッチを押したときの感覚がかなりソフトになります。ただし、荒っぽく踏んだ場合は他のフットスイッチとあまり変わらないかなと思います。

トーン約半分の位置でNuverdriveと同じになります。Nuverdriveの音は下記イベント・レポートの動画で聴くことができます。
KORG / Nutube BUILDER SUMMITイベント・レポート

---以下2017年5月14日追記---
Nutubeを別の個体に差し替えたところ、変な歪み方になりました。たまたま今まで使っていた個体が大丈夫だっただけで、バイアス調整トリマーは必要なようです。回路図・レイアウト・PCB画像を修正しました。

タグ : 自作エフェクター レイアウト 回路図 歪み 

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