MOSリレーバイパス

ソリッドステートリレーを利用したエフェクトのバイパス方法をバッファーなしで検討していました(別記事参照)が、音漏れやポップノイズの問題が解決できなかったため結局バッファードバイパスにすることにしました。BOSS筐体BD-2に採用しています。あまり利点がないバイパス方式となってしまいましたので、再度作ることはなさそうです。素直にラッチングリレーを使った方がよいでしょう。
▽回路図

秋月電子で安売りしている光MOSFET PS7200K-1Aを使用しましたが、フォトリレーTLP222Aでも問題ないと思います。エフェクト側の入力部分の回路によってはバイパス音に影響が出るので、本来は入力の分岐前にもバッファーを入れた方がよさそうです。バイアス電圧Vbはエフェクト回路から引っ張ってきています。
▽レイアウト

▽Arduinoスケッチ(ATtiny13A用)
#define SW_PIN 3
#define BYPASS_PIN 0
#define FX_ON_PIN 1
#define LED_PIN 4
int sw_value = 0;
long sw_count = 0; // intだとオーバーフローするかも
boolean fx_state = false;
void setup() {
pinMode(SW_PIN, INPUT_PULLUP); // 内部プルアップ抵抗有効
pinMode(BYPASS_PIN, OUTPUT);
pinMode(FX_ON_PIN, OUTPUT);
pinMode(LED_PIN, OUTPUT);
digitalWrite(BYPASS_PIN, HIGH); // 初期値はバイパス
digitalWrite(FX_ON_PIN, LOW);
digitalWrite(LED_PIN, HIGH); // 電源オン時LEDが2回点灯
delay(300);
digitalWrite(LED_PIN, LOW);
delay(300);
digitalWrite(LED_PIN, HIGH);
delay(300);
digitalWrite(LED_PIN, LOW);
}
void loop() {
sw_value = digitalRead(SW_PIN);
if (sw_value == LOW) {
sw_count += 1;
} else {
sw_count = 0;
}
if (sw_count == 10) { // 10msスイッチ押すとエフェクト切替(チャタリング対策)
fx_state = !fx_state;
if (fx_state) {
digitalWrite(FX_ON_PIN, HIGH); // HIGHにするピンの順番が逆だとポップノイズあり
delay(2); // これがないとポップノイズあり
digitalWrite(BYPASS_PIN, LOW);
digitalWrite(LED_PIN, HIGH);
} else {
digitalWrite(BYPASS_PIN, HIGH);
delay(2);
digitalWrite(FX_ON_PIN, LOW);
digitalWrite(LED_PIN, LOW);
}
}
delay(1);
}
チャタリング対策の参考ページ→Arduinoの基礎 – スイッチのオン・オフを読み取るATtiny13Aの使用方法はこちらの記事へ
RasPd3 ハードウェア編

今まで製作したRaspberry Pi搭載エフェクター(RasPd1、RasPd2、RasPd4)は単一エフェクトのみしか使えませんでしたが、今回のRasPd3は複数のエフェクトを同時に使えてパッチ切替もできる、いわゆるマルチエフェクターを想定したものです。当初はオーディオインターフェースにCS4272を使うつもりでした(別記事参照)が、うまくいかずWM8731を使っています。しかしながらCS4272を使ったオーディオカードTeensy Super Audio Board(SAB)は全データが公開されているので、大いに参考にしました。
▽回路図

ΔΣ型ADコンバータでは入力のフィルタは簡易なものでよいらしいので、RasPd4より簡略化しました。ギター入力はモノラルですが、WM8731のLR入力を逆位相にして内部プログラム(下図)で足し合わせるという差動入力っぽいことをしています。

ノイズ対策として、絶縁型DC-DCコンバータやデジタルアイソレータ(Si8662BB、Si8602AB)を用いてRaspberry PiとGNDを分離しました。スイッチについてはチャタリング対策の抵抗とコンデンサを入れています。ロータリーエンコーダは高速回転させるかもしれないので、コンデンサの容量が少なめです。
2.2インチLCDディスプレイモジュールはAmazonで購入しました。SAINSMARTの商品ページのManualに回路図が入っています。回路図中に3.3Vと記載がありますが、実際は3.0Vのレギュレータが使われていました。LEDピンへ抵抗を挿入すると明るさが減り、消費電力を抑えられます。Raspberry Piでの使用方法についてはadafruitのILI9341 TFT display用ページの内容で問題ありませんでした。
▽レイアウト(KiCadのデータはこちらへ)


WM8731のアナログGNDとデジタルGNDは分離せず、裏面のベタGNDができるだけ一面プレーンになるようにしています。スイッチ類の基板はユニバーサル基板で作成しており、細い線がジャンパーです。ディスプレイモジュールのSDカードソケットは配線の邪魔なので取り外しました。ケースはタカチTD10-15-4Bです。
ノイズについては、劇的ではないですが少しは減少したようです。入力が0.5Vrmsぐらいで歪率1%となりますが、ブースターとして使うことはないので大丈夫でしょう。内部プログラムについてはまだ全然できていません。今までにない規模のプログラミングとなるので、相当時間がかかると思われます。
タグ : 自作エフェクター レイアウト 回路図 RaspberryPi
monomonster Relay Bypass Module 解析
SPSTモーメンタリースイッチを使ってトゥルーバイパス+LED切替が実現できるmonomonster Relay Bypass Module (RMB)というものがGarrettaudioで販売されています。一体どういったものなのか興味があり、購入後回路を調べてみました。
▽基板写真

▽回路図

ATTiny13AというマイコンとHFD31/5-L1というラッチリレーが使われています。やたらとフィルムコンデンサが大きいので、積層セラミックコンデンサに変えてもよさそうです。出力側にある2N7000はスイッチングノイズ軽減の役割があると思われます。エフェクト回路の入力をGNDに落とすため、リレーの2番端子はGNDに繋ぐのが普通かと思いますが、基板裏のベタパターンが離れているために実際はどこにも繋がっていません(表のベタ塗りを忘れたのかも)。
スイッチングの様子を録音しました。

スイッチング時10ms程度出力がミュートされるプログラムとなっているようです。しかしながらMOSFETは構造上ダイオードが入っている(寄生ダイオード)ため、音量が大きいと波形がクリップされます。2N7000を外した場合は、スイッチング時大きくノイズが入ります。たぶん通常の3PDTスイッチと同じ程度のノイズだろうと思います。試しに2N7000を2SK303に差し替えた場合(足を曲げる必要あり)も録音しましたが、この場合はIdssの影響か音量が下がり波形も歪んでしまいました。
結局このモジュールはそのままでは使いにくいという結果となりました。回路採取にミスがないとも言い切れませんが……とにかく購入される方は注意が必要だと思います。
▽基板写真


▽回路図

ATTiny13AというマイコンとHFD31/5-L1というラッチリレーが使われています。やたらとフィルムコンデンサが大きいので、積層セラミックコンデンサに変えてもよさそうです。出力側にある2N7000はスイッチングノイズ軽減の役割があると思われます。エフェクト回路の入力をGNDに落とすため、リレーの2番端子はGNDに繋ぐのが普通かと思いますが、基板裏のベタパターンが離れているために実際はどこにも繋がっていません(表のベタ塗りを忘れたのかも)。
スイッチングの様子を録音しました。

スイッチング時10ms程度出力がミュートされるプログラムとなっているようです。しかしながらMOSFETは構造上ダイオードが入っている(寄生ダイオード)ため、音量が大きいと波形がクリップされます。2N7000を外した場合は、スイッチング時大きくノイズが入ります。たぶん通常の3PDTスイッチと同じ程度のノイズだろうと思います。試しに2N7000を2SK303に差し替えた場合(足を曲げる必要あり)も録音しましたが、この場合はIdssの影響か音量が下がり波形も歪んでしまいました。
結局このモジュールはそのままでは使いにくいという結果となりました。回路採取にミスがないとも言い切れませんが……とにかく購入される方は注意が必要だと思います。
タグ : 回路図
Crosstortion

東京エフェクター「第5回 エフェクタービルダーズ・コンテスト」に向けて製作したエフェクターです。コンテストのテーマは「ハイゲイン」だったのですが、ちょうど回路を考えていた2017年10月頃はBig Muffに注目が集まっていたので、なんとなくBig Muffをベースにすることにしました。また、今回は今までやったことがなかった「クロスオーバー歪み」をコントロールしています。ペダル名は単にcrossover distortionを略したものです。
ルックスもコンテストでは重要となりますが、私にはセンスがないので評価は低いでしょう。ポット周りの図形のカドが目盛りになっているというのをやってみたかったので、角ばったデザインにしました。それと、ウケがいいかもしれないという安易な考えで、適当に黄金比を取り入れています。シールは「手作りステッカー メタリックシルバー」というものを使いました。
▽回路図

オペアンプばかりですが、ICBM(オペアンプマフ)ではありません。トーン回路や周波数特性はトランジスタを使った現行Big Muffとほとんど同じで、歪み部分は個人的に好きな「オペアンプで歪ませる」というものとなっています。参考ページ→Big Muff Pi Analysis
コンデンサは3.9nFを持ってなかったので3.3nFにしたり、まとめ買いしていた10μFをやたらと使っていたり等、ある意味Electro-Harmonix精神も盛り込んでいます。
真ん中あたりの4つのオペアンプとLM317がクロスオーバー歪み関連です。こちらのページの図11と同じ回路で、理想ダイオード回路にLM317で調節した電圧を加算しています。同ページ図12のように波形の半分以上をバッサリとクリップしますが、プラス側とマイナス側を足し合わせることで擬似的にクロスオーバー歪みがある音を生み出しています。小音量の音はクリップする電圧値を超えられず切り捨てられるため、ノイズゲートとしても働きます。倍音については、奇数次倍音のみが出るようです(各クリッピングと倍音の記事最下部に掲載)。コンテスト用の個体は、一応トリマーを追加して最小電圧値を細かく調節しました。
あまり回路検討にかける時間がなかったので、後から見ると粗がある感じがします。入力部のICを変えれば全部5V駆動でよさそうです。あとクロスオーバー歪みを扱うなら素直にトランジスタを使う方がもっと簡単だったんじゃないかと思います。
▽レイアウト

▽PCB(横86.4mm縦40.6mm)

歪みエフェクターは筐体が大きい方が印象に残る気がするので、余裕を持ってHAMMOND 1590BBを使いました。基板は秋月電子にある角型ランドのもので、見た目はなんだかカッコイイですが少し薄い(厚さ1.2mmぐらい)です。
音についてはたぶんBig Muffっぽくなっていると思います。まぁ私は自作ラムズヘッドぐらいしかビッグマフを弾いた経験がないのでよくわかりません。倍音も測定しましたが、少し奇数次倍音が多く普通の歪みという感じでした。ハイゲインだとクリッピングの違いはあまりわからなくなると思います。肝心のクロスオーバー歪みについては、なんともいえないジュワーという感じが付加されます。ゲートファズのようなブチブチ系にもできますが、正直私はあまり好きでなかったです…
---以下2018年3月19日追記---
「第5回 エフェクタービルダーズ・コンテスト」第一次審査の点数を記載しておきます。
コンセプト:17 サウンド:16 ルックス:16 操作性:16
総合点:65 21台中11位
RasPd4 ハードウェア編

微妙に不安定な面があったRasPd2を作り直しました。「3」を飛ばして「4」になっていますが、奇数番号は多機能タイプで、偶数番号はコンパクトタイプということにしておきます。スイッチやポットの基板についてはRasPd2のものを流用しており、外観は変わりません。初めてPCBを基板製造業者に注文しましたが、まぁまぁ納得の出来栄えでした。Raspberry Piは「zero W」です。
▽回路図

入力にローパスフィルターを追加し、出力はヘッドフォン出力ではなくライン出力を使っています。ステレオ入力や出力バッファー追加も考えていたのですが、チップ部品でないと入らなさそうだったので諦めました。ダンピング抵抗は22Ωから47Ωへ上げて様子を見てみます。電源は9Vではなく5Vにしたので、大きな降圧レギュレータが不要となりました。DCジャックには間違えて9Vのプラグを挿さないように、秋月電子で買った「電圧区分4」というものを使用しています。
▽レイアウト(KiCadのデータはこちらへ)

あまり意味はないかと思いますが、一応レイアウトも載せておきます。GNDはアナログ(右側)とデジタル(左側)に分けていて、中央下のあたりの一点で接続するようにしました。GPIOの番号は「*」印で示しており、使わないGPIOについては左端に引き出してあります。Raspberry Piが重なる部分は高さ7mmの電解コンデンサを使いましたが、スペースがあるので横に倒してもなんとか入りそうです。注文した基板は1M(R1)と1K(R2)の印字位置を逆にするというミスがあり、危ないところでした…
ノイズについてはRasPd2とほぼ同じくらいです。ギターが拾うノイズの方が大きいので、まぁOKということにしておきます。最大入出力レベルは0.9Vrms程度で、これも問題ないと思います。以前あったエラー音のような音については、起動して数十秒の間に短くビッと鳴ることがありますが、それ以外では今のところ大丈夫なようです。
WM8731より性能がよいIC(CS4272が候補)を使うとさらに高品質になると思われます。自作するとなると情報が少ないのですが、今後取り組んでみたいところです。
RasPd4 プログラミング編へ
タグ : 自作エフェクター 回路図 PureData RaspberryPi